350
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/05(水)
22:27:13.56 ID:5f140KfBO
「寝ろ!!!!!!」
(;^ω^)ξ;゚听)ξ「!!??」
様子見から戻って来たドクオが、開口一番言い放った言葉がそれだった。
('A`)「そうだな…夕方まで寝ろ。何も考えずに寝ろ。死ぬ気で寝ろ。何でもいいから今のうちに体力十分に回復しとくんだ」
ξ;゚听)ξ「ちょっと待って…!何があったのよ?」
('A`)「起きた時に教える。とにかく今、お前らは寝とけ。時間が来たら起こしてやる。うら、戻れ戻れ。ああ、そうだこれ飲んどけ」
(;^ω^)「ちょwwww話を………」
('A`)「寝 ろ !!!!!!!!」
(;^ω^)ξ;゚听)ξ「は、はい…」
353
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/05(水)
22:38:04.09 ID:5f140KfBO
理由を問う暇も与えられず苦い疲労回復薬を飲まされ、追い立てられるように洞穴ことドクオハウスに戻り、何がなんだか分からないままに眠り、時が過ぎて。
内藤達がドクオに叩き起こされた時には既に洞穴の外は茜色に染まっていた。
( ´ω`)ξ´凵M)ξ「…おはよう(お)」
('A`)「ん。飲め」
薄い毛布の上に正座し、眠たさ全開の声でとりあえず挨拶する内藤夫婦の前に、マグカップに入ったハーブティーが差し出され、ツン、とメザメルミントのさわやかな香を漂わせる。
356
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/05(水)
22:53:19.50 ID:5f140KfBO
( ^ω^)「ふー…お目々すっきりだお」
ξ゚听)ξ「夢も見ずに寝てたわね…」
その名の通りにパッチリと目が覚めるような爽快感を寝起きの身体に染み渡らせた内藤達は、ようやく自分達の前に置かれた二つの古臭いズタ袋に気付いた。
( ^ω^)「?」
内藤が不思議そうに見ている前で、ドクオが手際のいい手つきで荷を解いて中の物を並べていく。
赤々と燃える中央の火に照らされて、果物やらサバイバルナイフやら水筒やら薬草やらがゴロゴロと内藤の視界に広がって行く。
( ^ω^)「えらく重装備だお」
('A`)「ああ。お前らはもう街道を使う事は出来ねぇからな」
359
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/05(水)
23:19:50.70 ID:5f140KfBO
あっさりと告げられ、内藤は動揺の色を目に浮かべる。
(;^ω^)「ど…どういう事だお?」
('A`)「そのまんまの意味さ。昼間見に行った時、既に一本道を塞がれちまってた。外見からして村の連中じゃあなさそうだが、どっちにしろ神様とやらの信者な事には変わりねぇな」
ドクオが淡々とした口調で説明している間を縫って、ニートウルフ特有の流れるようなたて髪を豊かに揺らしながらラオウが洞穴の外から帰って来た。
ミ,,@盆@ミ『案の定、退く気配は無いようだな。銃を所持する人間の顔触れこそは違っているが、人数は変わらん。そして相も変わらず壁が道を遮断しておる』
('A`)「おう、報告5963」
ミ,,@盆@ミ『何、構わんさ』
363
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/05(水)
23:33:18.12 ID:5f140KfBO
お安い御用だ、と軽い口調で付け足して洞穴の隅ですやすやと眠っているセルバンテスの元に向かうラオウが側を通り過ぎるや否やツンが小さく悲鳴を上げた。
ξ;゚听)ξ「一本道を塞がれたって事は…私たち、ここから逃げられないじゃない!」
(;^ω^)「あ…!!!」
('A`)「焦りなさんなよ。完全に逃げられないって確定してたら、俺はこんな風に落ち着いて座っちゃないぜ」
ドクオの、言葉通り落ち着き払った声音と言葉に不安に駆られていた内藤達も気を緩める。
ξ゚听)ξ「何か…策があるの?」
368
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/05(水)
23:46:03.46 ID:5f140KfBO
恐る恐る問いかけるツンを見て、ドクオは顎を引いた。
('A`)「急がば回れ、だ」
( ^ω^)「急がば…」
ξ゚听)ξ「回れ…」
反芻する二人を尻目に、ドクオは荷物の中から内藤の所持していた地図を取り出し、広げた。
('A`)「よく聞いとけよ。お前らは今ここにいるのは分かってんな?」
と、転がっていた木炭の一本を使って荒れ地の一隅をトントンと叩く。
( ^ω^)「把握してるお」
('A`)「ああ。…で、お前達が此処から脱出するために通らなきゃなんねぇ道は、ここだ」
荒れ地から大道に繋がる小道の上でスイスイと木炭を動かして、村から真っ直ぐに伸びた一本道をなぞる。
('A`)「だが、ここで」
なぞっていく線の途中でドクオが手を止め、クイッと横線を引いて道を封鎖する。
('A`)「道は塞がれちまってる」
375
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
00:06:31.09 ID:5f140KfBO
( ^ω^)「…回り道と言っても…この地図によると街道の左右はほとんど畑だお。」
('A`)「ああ。視野が開けてる分、のこのこ歩いてたら不審者と間違われて即座に銃弾ドキュソかもな」
(;^ω^)「…怖い事言うなお。畑を通るのはリスクが高いと言う事だけは分かったお」
ξ゚听)ξ「なら…なら、何処を使えばいいの?」
ツンが地図を睨むように覗き込む。
('A`)「発想の転換、だな」
ドクオの持つ木炭が街道を離れ、再び荒れ地に戻って来た。
('A`)「最終的に道にたどり着けばいいんだからな。まず、道に出る、と言う考えを捨てるんだ」
379
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
00:18:54.65 ID:lFojCqSkO
('A`)「俺がさすらいの薬草ハンターで、お前らマジで得してんぜ。感謝しろよな」
(;^ω^)「もったいつけないで早く教えて欲しいお」
身に湧く焦り故にか、急かす内藤を一瞬ふて腐れたように見つめてからドクオは話を再開する。
('A`)「街道の右手の、畑よりずっと奥の方を見てみろ、森があんだろ」
ξ゚听)ξ「ええ…リアチュウ・フォレストね」
('A`)「ああ、そこを使う」
(;^ω^)「無理だお」
話を聞いていた内藤が、地図を指差しながら口を挟んだ。
( ^ω^)「リアチュウ・フォレストはチューボー・フォレストと違って村から独立してるお。
ここまで行くにはどうしても畑を通らなくちゃいけないお。畑を通っている間に銃弾ドキュソは洒落にならないお」
382
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
00:29:39.65 ID:lFojCqSkO
ドクオがニヤリと笑った。
('A`)「おい、地図だけを信じてんじゃねぇよ。人間最終的に頼りになんのは、自分の目と足なんだぜ」
( ^ω^)「…どう言う事だお?」
('A`)「地図には描かれちゃいないからよ。此処に来たがる奴なんか滅多にいねぇのと合わせて考えれば、恐らく俺以外の誰も知らねぇだろうな」
キュイ。
ドクオは黙って、何も無い地図上からリアチュウ・フォレストに向かって一本の線を引き延ばした。
ξ゚听)ξ「これは…」
('A`)「ああ。この荒れ地から、リアチュウ・フォレストまで通じる道があるんだよ」
( ^ω^)ξ゚听)ξ「!!!ホント(かお)?!」
392
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
00:44:33.60 ID:lFojCqSkO
('A`)「この状況で嘘言えるんなら、俺の腹の底はカーボンブラックだな…」
( ^ω^)「いや、信じてるお。世界中の誰が君を疑ったって、僕だけは君の全てを、ありのままの君を信じてるお」
ミ,,@盆@ミ『それなんてプロポーズ?』
('A`)「まあ、その道は後で案内してやるよ。そん時はラオウに世話を掛けるからな…今のうちに頭でも下げておきな」
( ^ω^)ξ゚听)ξ「?よ、よろしくお願いしますお」
ミ,,@盆@ミ『何、たいした事ではない』
律義に頭を下げる夫婦を見て、ラオウが笑った――ように見えた。狼の表情はよくわからない。
396
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
00:56:31.37 ID:lFojCqSkO
ξ゚听)ξ「と言う事は、この道を通ってリアチュウ・フォレストに入って…」
ツンの指の動きを一同が追い掛ける。
リアチュウ・フォレストを抜ける頃には既に村から大分離れた場所であり、見張りの目が届いたとしても不信には思われないだろう。
更に、最寄りのラウンジタウンは目と鼻の先である。
ツンの指が、街道の上で止まった。
ξ゚听)ξ「リアチュウ・フォレストを抜けた頃にこの畑を突っ切るなり何なりして、街道に出ればいい。こういう事ね?」
('A`)「ああ、ご名答だ。急がば回れ。この意味が分かったか?」
397
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
01:04:51.90 ID:lFojCqSkO
( ^ω^)「下手なリスクを背負うより、遠回りしても安全な道を選択汁、って事かお…」
内藤が感心したようにドクオを見た。
ドクオが頭を掻く。
('A`)「まあ、リアチュウ・フォレストにゃ、戦闘力がニートウルフ並みの人喰い熊が出るんだけどな」
(;^ω^)ξ;゚听)ξ「ちょwwwwwwリスクテラタカスクリニックwwwwwwwwww」
いきなりすぎるドクオの暴露に、内藤が慌てて詰め寄った。
(;^ω^)「それじゃあ銃弾と同じくらい危ないお!!」
('A`)「落ち着けよ…あーほら唾飛んだ。内藤菌が移った」
(#^ω^)「小学生の頃のトラウマを思い出させるなお!!!」
404
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
01:14:43.40 ID:lFojCqSkO
('A`)「黙って聞けよ。リアチュウ・フォレストに薬草採りに行って熊に出くわした揚句、無傷で生還した生き証人が目の前にいるんだぜ」
( ^ω^)「ひ…人喰い熊に出くわして助かったのかお?!」
('A`)「ああ」
ドクオは神妙な面持ちで頷き、「それ」を取り出した。
('A`)「俺が助かったのはこの霊験あらたかな壷のおかげなんだが、今なら月々1万円から24回のローンで―――…」
(*^ω^)ノ「買ったお!!!」
ミ,,@盆@ミ『ねーよwwwwww』
ξ#゚听)ξ「こんな時にふざけないでよねっ!!!」
ガインッ!
417
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
01:27:42.35 ID:lFojCqSkO
ツンの拳が振るい飛んだ。
(#)´ω^)「さて。
混迷する日本経済についての議論はここまでにして、私達は貴方が無事に生還なされた理由をお聞きしたいと思うのですが…構いませんかお?ドクオさん」
(#)'A`)「ハハハ、私に答えられる事ならば何なりとお答えしますよ内藤さん。貴方とのディスカッションは人間的に成長出来ますからね」
ミ#)@盆@ミ『ははは…流石ドクオ氏、お返事の心良さに人柄の良さが伺える』
ξ;゚听)ξ「……そこまで真面目にやらなくてもいいわよ…」
427
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
01:38:43.03 ID:lFojCqSkO
('A`)「よっと…」
ドクオがゴキゴキと首の間接を鳴らしながら、壷の蓋を引き開けた。
ぷうん、と濃密な蜜の匂いがする。
( ^ω^)「これは…?」
('A`)「スゲーアマーイの木の樹液から作ったシロップだ。人喰いツリクマーの大好物らしくてな。奴らにとっちゃ、猫にまたたび、引きこもりにVIPみたいなモンらしい」
ドクオは木匙で並々とそれを掬い取ると、薄くスライスしたパンに塗り付けて行く。
('A`)「まあ、昼飯代わりに持ってったんだがな。あん時はガチで喰われそうになったんだが、イチかバチかで放り投げたら熊の野郎、俺には見向きもしなくなったよ」
434
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
01:50:35.53 ID:lFojCqSkO
ドクオは蜜を塗ったばかりのパンを自分で食べながら、とすっと布袋を内藤に投げた。
( ^ω^)「あ…」
中には大量の乾いたパン。いや、ラスクか。その全てから、ぷぅんとスゲーアマーイの匂いが漂う。
('A`)「パンのスライスに塗り込めて乾かしただけだが、効果はあるはずだ。ツリクマーに遭遇したら、思い切りぶん投げろ」
ドクオが指に付着した糖蜜を舐めながら言った。
('A`)「シロップをまんま渡しても良かったが、液状だと扱いにくいだろうからな。昼間お前らを寝かせてる間に作っておいたのさ」
436
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:02:27.30 ID:lFojCqSkO
内藤から受け取った布袋を抱え、ツンが嬉しそうに言った。
ξ*゚听)ξ「…これで森を抜けられるわ。しっ、仕方ないから感謝してあげるわよ!」
(*^ω^)「そうだお!ホントにありが
('A`)「いや、まだだ。こんなヤワな知識で森を抜けようなんざ、甘ちゃんにも程があるぜ。次はこれだ」
喜ぶ夫婦の声を遮ってドクオがズタ袋に詰めていた、夥しい数の薬瓶や薬草を取り出して行く。
にんまりと、物凄く嬉しそうにドクオが笑う。
('∀`)「今から俺様が短時間でこいつらの効能と使用法について、みっちりレクチャーしてやるよ。耳の穴かっぽじってよく聞いとけ」
(;^ω^)ξ;゚听)ξ「は、はい(お)…」
ドクオのマシンガントークはおよそ45分の間、止まる事が無かった。
438
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:14:41.35 ID:lFojCqSkO
(;^ω^)「ちょっとおしっこして来るお。頭くらくらするお…」
早めの夕食にトラウサギジャーキーのサンドイッチを頂きながらの45分間。
メモを取り記憶に叩き込み、必死で『ドクオ流完全薬草マニュアル』を身に付けた内藤はふらふらと洞穴の外に出て行った。
ミ,,@盆@ミ『某も付き合おう…』
寝そべって、眠る我が子を愛撫しながら話を聞いていたラオウが立ち上がる。頭が飽和状態の内藤の危ない足取りを気遣っての事だろう。
洞穴には、ツン、ドクオ、セルバンテスと言う何とも微妙なコンビが残される。
441
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:21:21.44 ID:lFojCqSkO
('A`)「………」
若い女と二人切りなのが落ち着かないのか、ドクオは先程からそわそわと視線をさ迷わせている。
一方のツンは、いつもと変わらずにぼんやりと内藤達の消えた外を眺めていた。
ξ゚听)ξ「もう直ぐ夜ね…」
('A`)「もう一泊していくならそれでもいいが…進むなら夜の方がいい。リアチュウ・フォレストはチューボー・フォレストと違って夜行性動物は少ないからな」
ξ゚听)ξ「行くわよ。たっぷり休ませて貰ったもの、そんなにヤワじゃないわ」
すらりとした脚を投げ出しながら、ツンが笑う。
強気に光るその表情を見つめていたドクオは、思わず漏らした。
('A`)「アンタ、しぃとは正反対なタイプの女だな…」
445
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:29:40.09 ID:lFojCqSkO
ξ゚听)ξ「しぃさん?」
軽く片眉を跳ね上げて問い返してくるツンを前に、ドクオは「しまった」とでも言う如く口を押さえる。
ξ゚听)ξ(……ははーん)
女の勘の前には、それだけで十分だった。
('A`;)「…何となく思っただけだよ。特に意味はねぇ」
若干慌て気味の口調で弁解紛いを口にするドクオに、ツンはフッと笑いかける。
ξ゚ー゚)ξ「好きなんでしょ」
ブッ!!!
ドクオが思い切り吹き出した。
(*'A`*)「ああうあいくぁwせdrftgyふじこlp@!!!ねーよ!!!」
ξ゚ー゚)ξ「しぃさん、綺麗だもんね。トニー=ブラウンが絡まなかったら性格もバッチリだし」
450
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:38:51.57 ID:lFojCqSkO
(*'A`*)「………〜っ」
ξ゚ー゚)ξ「花だって、気になるから届けてるんでしょ。好きだって伝えた?」
(*'A`*)「だっだから違うっつうの!!!しぃは昔のダチだ!!!大体、しぃにはずっと忘れられねぇ奴がいるんだよ!!!!!」
大人びて見えるドクオが見せた年相応の姿に笑みを誘われていたもの、剣幕に気圧されてツンは真顔でじっとドクオを見つめた。
ξ゚听)ξ「忘れられない人……」
('A`)「…そいつがしぃの胸ん中にいる限り、どんなに好きでも俺がしぃに想いを告げるなんざ有り得ねぇよ」
454
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:47:46.71 ID:lFojCqSkO
ξ゚听)ξ「やっぱり好きなんじゃないのよ」
('A`*)「うるせー…」
ドクオがそっぽを向く。
ツンはそんなドクオの横顔を見つめたまま、少し遠慮がちに口に出した。
ξ゚听)ξ「……しぃさんの『忘れられない人』って、旦那さん?」
('A`)「………ああ。俺がこの世で一番尊敬してる男だ」
しぃが未亡人だと言う事は知っていた。
('A`)「…んで、俺が殺したようなもんだ」
ドクオが低く呟き、俯く。少し弱くなってきた炎に、小さな小枝を放り込んだ。
ξ゚听)ξ「………」
457
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
02:55:50.60 ID:lFojCqSkO
ξ゚听)ξ「何があったか知りやしないけど」
ふう、と溜め息を吐いてツンが巻き毛を掻き上げた。
ξ゚听)ξ「しぃさんが可哀相ね」
('A`)「――…ッ、分かってるよ。そんな事。しぃから幸せな笑顔ってヤツ奪っちまったのは俺だ」
ドクオは歯を食いしばって拳を握り締める。
('A`)「んでも俺は、そんくらいは取り戻してやるよ。モララーは…取り戻してやれなくても。…絶対」
真剣な顔でそう呟くドクオに、ツンが呆れた顔をして「やれやれ」とでも言う如く視線を向けた。
ぐしゃぐしゃぐしゃ!
('A`;)「!!!??」
ξ゚听)ξ「アンタ馬鹿?」
461
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/06(木)
03:05:19.60 ID:lFojCqSkO
ξ゚听)ξ「誰もンな事で可哀相だって言ってんじゃないわよ」
ドクオの黒髪を思い切り乱した手をパンパンと叩きながら、ツンは状況に対応出来ず腰を抜かしているドクオをねめ付ける。
ξ゚听)ξ「そんな可哀相な目に遭ってんのに、王子様がウジウジしてていつまで経ってもさらいに来てくれやしないのが、可哀相だっつってんの」
('A`;)「……何の話だよ。誰が王子だっつんだ」
ξ゚听)ξ「アンタ」
('A`;)「ちょwwwww無茶言うんじゃねぇよwwwwwwww」
ξ゚听)ξ「アンタね、放っておく事が彼女に対する優しさだと思ってんじゃないの?」
- 467 名前:CATS ◆STRAY/tOkM
[] 投稿日:2006/04/06(木) 03:19:24.65 ID:lFojCqSkO
- ('A`)「………」
色めまぐるしく変化していたドクオの表情が、ピタリと止まった。痛い所を突かれた――――そんな反応だった。
ξ゚听)ξ「どんなにいい人だったかは知らないけど、死んだ旦那に心奪われたまんま花の二十代を散らせる事が彼女にとって幸せな事なの?」
('A`)「…るせぇ」
ξ゚听)ξ「彼女がそれを望んでいたとしても、それは本当に幸せな事なの?」
('A`#)「るせぇ!!!」
バァンッ!!!
ドクオの振るった何かの空き瓶が、地面に弾けて緑色の硝子を撒き散らす。
ξ゚听)ξ「…物に当たってんじゃないわよ」
('A`)「……。俺には資格がねぇよ。しぃを好きになる資格がねぇんだよ」
- 470 名前:CATS ◆STRAY/tOkM
[] 投稿日:2006/04/06(木) 03:29:50.00 ID:lFojCqSkO
- ξ゚听)ξ「資格って何よ?」
ツンの容赦無い問いにドクオがピクリと肩を揺らした。
('A`)「だから…俺のせいで、アイツの旦那は
ξ゚听)ξ「アンタはその人を殺したかったの?」
('A`#)「――んな訳ねぇだろ!!」
ξ゚听)ξ「ならアンタのせいじゃないのよ」
ツンはあっさりと言い捨てた。ドクオは暫くツンを睨み付けて居たが――やがて、疲れたように脱力して目頭を押さえた。
('A`)「…何も知らねぇのに、勝手な事言うんじゃねえ」
ξ゚听)ξ「何も知らないからこそ、好き勝手に言わせて貰ってんのよ」
- 472 名前:CATS ◆STRAY/tOkM
[] 投稿日:2006/04/06(木) 03:41:00.48 ID:lFojCqSkO
- そう言い切られてしまうと、ドクオには言い返す言葉が無かった。
ξ゚听)ξ「それに。もしアンタのせいで旦那さんが亡くなった事を悲観してるんなら、アンタは尚更しぃさんを支えなきゃいけないんじゃないの?」
('A`)
ξ゚听)ξ「彼女の傷が癒えて………例え彼女がアンタを振り向かずに余所の男を選んだりしても。
彼女が立ち直るまで何が何でも傍に居てやるのが、責任ある男の態度ってモンじゃないの」
ドクオは黙ったまま、ぼんやりと飛び散った硝子の破片を見つめていた。
- 477 名前:CATS ◆STRAY/tOkM
[] 投稿日:2006/04/06(木) 04:02:16.57 ID:lFojCqSkO
- ξ゚听)ξ「て言うか…」
ツンのキッと尖らせたキツイ眼差しが、ドクオを射抜いた。
ξ゚听)ξ「大の男がウジウジウジウジ、見てるだけでもムカついてくんのよ!!」
ドクオが弾かれたように顔を上げた。ツンの瞳が真正面からうろたえた顔を捕まえる。
('A`;)「…う………」
ξ゚听)ξ「アンタの人生でしょ…ビシッと決めて行きなさいよ。アンタの本当の気持ちに正直にね」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「これ以上は何も言わないわ。ただ、あたしは誰にだって幸せを追い掛ける権利はあると思うの」
('A`)「幸せを追い掛ける権利…」
ξ゚听)ξ「しぃさんにもあるし、あたしにだってあるし、ブーンにだってあるし、ラオウさんにだって、セルバンテスにだって…」
ツンの口端が悪戯に上がる。
ξ゚听)ξ「アンタにだってあんのよ」
16
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/07(金)
01:11:07.51 ID:3vaq+PdXO
ドクオは困ったようにツンを見た。まるで、小さな頃捨てたはずのヌイグルミをいきなり与えられた時のような、戸惑いがちな表情で。
ツンはそれを見て一笑する。
ξ゚听)ξ「ま、過去に囚われて腐ってないでアンタも好き勝手に生きてみたら?って事。アンタいい男なんだからさ」
ドクオが思い切り吹き出す。
Σ('A`;)「いい男?!」
ξ゚听)ξ「思っただけよ!あたしには一応ブーンがいるんだから勘違いしないでよね!」
('A`)「…。旦那さんも苦労してんだろうな」
ξ゚听)ξ「どーいう意味よ!?」
('A`)「そのまんまだよ」
ξ#゚听)ξ「なっ…!」
('A`)「でもアンタと結婚して後悔はしてねーだろうな。アンタもすげぇいい女だ」
23
:CATS ◆STRAY/tOkM :2006/04/07(金)
01:30:00.49 ID:3vaq+PdXO
- ツンが驚いたように目を見開くのを見て満足そうに、ニヤリ、と一瞬だけドクオが笑った。
ξ*゚听)ξ「…!あ、当たり前じゃないのよ!大人をあんまりからかうと痛い目に遭うわよ!」
('A`)「からかっちゃねーよ。マジでそう思ってんぜ?」
ξ////)ξ「だから!からかうなつってんでしょ!!」
('∀`)「ハハ…」
ツンがぶん投げて来た新庄のサイン入りボールを週間少年ジャソプで打ち返しながら、ドクオは自分の口から漏れた笑いを不思議な気持ちで聞いていた。
気が付けば、もやもやしたものを全部ぶちまけていた事に気付く。人前でこんな話をする日が来るとは、思っていなかったのに。
アンタにだって、幸せを追い掛ける権利はあるのよ。
ξ゚听)ξ「ちょwwww場外ホームランktkrwwwwwww」
('A`;)「新庄!!!俺の新庄!!!!!111」
何となく穏やかな気分だった。
第6部5
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