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: ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日)
23:24:08.06 ID:GvI/93yC0
僕とツン、ジョルジュが食器の片づけを終えてラウンジに出ると、
そこにいたのは、読書中のショボーンとドクオだけだった。
ξ゚听)ξ「クーちゃんとぽっぽちゃんは?」
(´・ω・`)「お風呂だよ」
ξ゚听)ξ「じゃあ私も入ってこようかな」
(*'A`)「じゃあ俺も」
(;^ω^)「……ドクオが変なことしないように、僕も一緒に入って見張ってるお」
( ゚∀゚)「ショボーン、俺たちは一杯や ら な い か?」
ジョルジュは倉庫から見つけたワインとグラスを手に、ショボーンの隣に少し離れて座った。
ドクオと僕は当たり障りの無い雑談くらいしかせず、あまり長居はせずに風呂から上がることにした。
そうして何事も無いまま、夜は更けていった。
僕は少しだけ拍子抜けしたものの、やっぱりそんなもんだろうと思いながら階段を上っていると、
( ^ω^)「……ピアノかお?」
耳を済ませなければ聞こえない、かすかなメロディに気がついた。
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: ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日)
23:34:43.62 ID:GvI/93yC0
( ^ω^)「ピアノ……ってことは遊戯室かお」
僕は自分の部屋に向かう足を止め、方向転換させる。
行ってどうしようというわけでもなくて、ただ、何となく興味がわいただけなんだけど。
遊戯室の扉を開けると、静かに開けたつもりだったのにピアノを音は止んでしまった。
(*‘ω‘ *)「あ、内藤くん」
(;^ω^)「ごめんだお。邪魔するつもりじゃなかったんだお。どうぞ続けてくださいだお、クーさん」
ピアノを弾いていたのは、やっぱりクーさんだった。
川 ゚ -゚)「しかし、どうかしたのか?遊戯室なんかに」
( ^ω^)「ちょっとピアノの音が聴こえたから、見にきただけだお」
(*‘ω‘ *)「やっぱり防音って言っても、完璧じゃないんだねー」
川 ゚ -゚)「……」
クーさんは少し考えるような顔をして、
ピアノのそばに置いてあったヘッドフォンのプラグを電子ピアノに差し込んだ。
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: ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日)
23:46:42.56 ID:GvI/93yC0
川 ゚ -゚)「就寝の邪魔になってはいけないからな」
( ^ω^)「でも、耳を澄まさなきゃ聴こえないくらいだったお?」
川 ゚ -゚)「あと2時間程は弾こうと思っているから」
遊戯室の壁に掛けられた時計を見ると、午後10時をまわっていた。
(*‘ω‘ *)「内藤くん、ゲームやらない?」
( ^ω^)「いや、僕はもう寝るお。おやすみだお」
(*‘ω‘ *)「じゃああたしも寝ようかな。おやすみ、クーちゃん」
川 ゚ -゚)「おやすみなさい」
僕らはクーさんを残し、遊戯室を後にした。
ちんぽっぽさんも自室に入って、それを見届けてから僕も自分の部屋に入った。
車で長距離移動での疲れもあったが、なんだか精神的にひどく疲れていた僕は
すぐに眠りにつくことが出来た。
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: ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日)
23:57:42.77 ID:GvI/93yC0
――遊戯室。
ヘッドフォンを両耳に当てたクーは、黙々とピアノを弾いていた。
時折休憩を挟んで手のマッサージをしたり、楽譜を選んだりといった時以外は、
ひたすらにピアノを弾いていた。集中力が高いのだろう。
クーが何曲目かの曲を弾き始めたとき、キィ、と静かに遊戯室の扉が開いた。
しかしクーは気付かない。
なぜなら彼女は扉に背中を向け、ヘッドフォンを両耳にあて、
そしてなにより演奏に集中しているのだから、気がつくはずも無いだろう。
侵入者は身を屈め、できるだけ音を立てないように慎重に、彼女の背中に近づいていく。
鍵盤を叩く音と、かすかにヘッドフォンから漏れるピアノの演奏が、
侵入者のわずかな物音も消してくれているようだった。
そして侵入者は彼女の真後ろまでやってきた。
クーはまだ気がつかない。
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: ◆bsKbvbM/2c :2006/03/20(月)
00:04:21.97 ID:ePooG7lI0
その時、侵入者が音も立てず立ち上がった。
その気配を感じたのか、それともその影が鍵盤に反射したのか、
鍵盤を叩いていた指は止まった。
いつもクールな彼女の顔には、かすかな焦りが見える。
侵入者は彼女が振り向く前に、ぬっとクーの横に手を突き出しヘッドフォンのコードを引き抜いた。
川 ;゚ д゚)「っ!!」
クーがそれを阻止するまもなく、そのコードはすばやくクーの首に巻きついていた。
彼女の首を黒く細いコードが締め付ける。侵入者に、手加減する様子は見えない。
ほんの数秒前まで鍵盤の上を軽やかに滑っていた長い指が、今は必死にコードを引き剥がそうとしている。
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: ◆bsKbvbM/2c :2006/03/20(月)
00:08:47.54 ID:ePooG7lI0
……しかし、それは叶わなかった。
彼女の四肢が小さく痙攣すると、その体はがくりと空気が抜けたように項垂れた。
侵入者はクーの首からコードを解くと、ポケットから取り出した一枚の紙とともにその場に置き、
扉のそばにある電気のスイッチを押し、扉を開ける。
完全な暗闇となった遊戯室には、ずるずると女の体を引き摺る音だけが聞こえていた。
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第5話目