60CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/25(土) 23:56:43.06 ID:lJwpJ6NmO
【第三部―ようこそ、ハレルジャ・ヴィップレッジへ―】

( ^ω^)「あ、あれは村の入口の看板だお!」

ξ゚听)ξ「ほんとだ。もう着いたのね」

ツンが嬉しそうに言った。その場所に近づくにつれ、空気が変わっていくような…そんな気がした。
不思議な力で、心が安らぐような、それでいて何となくウキウキするような。
内藤とツンは疲れていたが、励まされるように先を歩いて行った。

ξ゚听)ξ「ん?」

ツンがふと立ち止まった。

( ^ω^)「どうしたお?」

ξ゚听)ξ「いえ…あそこに薄汚れた男の子が見えた気がしたの」

と、指差した場所はのどかな田園風景にそぐわない、岩肌が露出した荒れ地だった。

61CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:03:32.34 ID:xIjdNt00O
( ^ω^)「まさか…あんな場所に人なんているわけないお。見間違いだお」

ξ゚听)ξ「なによ、信じないの?」

( ^ω^)「そういうわけじゃないお…」

ふて腐れたようにツンが呟くのをなだめながら、内藤は足早にその荒れ地に通じる道の脇を通りすぎようとする。何となく気味が悪かったのだ。

その時だった。

('A`)「あんたら…」

( ^ω^)「?!」
ξ゚听)ξ「ほら!言った通りじゃない!」

ツンが勝ち誇ったように少年を指差した。少年、と言ってももう18ほどだろうが。擦り切れた服を着て、手足は汚れていた。

('A`)「ハレルジャに行くのか?」

( ^ω^)「そ、そうだお」

('A`)「ならさ、これを届けてくれねぇか?」

少年はとても綺麗な花束を差し出した。

62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/03/26(日) 00:11:37.72 ID:xIjdNt00O
( ^ω^)「これを?」

('A`)「ああ…俺が村に入ると嫌がられるからさ」

ξ゚听)ξ「誰に渡すの?」

('A`)「………女の人だよ。しぃって言うんだ。んでも、俺が渡したとか言わないでいいから」

( ^ω^)「君、名前はなんて言うんだお?」

('A`)「ドクオだ。じゃ、悪いけど、頼む。よろしくな」

ξ゚听)ξ「あっ」

花束を預けたまま、ドクオは風のように荒れ地に走っていってしまった。

ξ゚听)ξ「変な子…それにしても綺麗な花ね」

( ^ω^)「なんだかよくわからないけど、頼まれたんだからしっかりお手伝いするお」

ξ゚听)ξ「わかってるわよ」

そして二人は、神の住む村へと足を踏み入れたのだった。

63CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:19:19.27 ID:xIjdNt00O
―村内―
/;3「ご機嫌うるわしゅう、レディ・しぃ」

(*゚ー゚)「荒巻さん…お体は大丈夫ですか?」

/;3「あんたが世話を焼いてくれたからね。この通りさ」

(*゚ー゚)「それは良かったです…」

/;3「それで…この間の話は考えてくれたかね?私の元で、妻となって暮らすと言う話を」

(*゚ー゚)「荒巻さん…私、結婚なんて考えられないんです。私の胸の中には、あの人がいるんですから」

/;3「見なさい」

グッ。荒巻がしぃの小さな手を取った。

(*゚ー゚)「!!」

/;3「何もしやしないよ。…あんたの手は荒れている。折角の美しい手が勿体ないとは思わんかね?」

(*゚ー゚)「何がおっしゃりたいんですか…?」

/;3「その美しさを完璧にしたくはないのかね?」

64CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:26:05.23 ID:xIjdNt00O
(*゚ー゚)「…」

/;3「身を飾りたくはないのかね?私のものになればメイドも付けてあげよう。数々の装飾品も君のものだ」

(*゚ー゚)「やめてください!」

怒ったようにしぃが荒巻の手を払った。

(*゚ー゚)「そんなもの…いりません。私には、トニー様が…トニー様がいらっしゃいます。
トニー様には、夫が生き返るようにと祈願を掛けているんです。私は…夫がいれば…トニー様がいれば…何もいりません」

/;3「…………」

(*゚ー゚)「ごめんなさい…気持ちは変わりません」

丁寧に頭を下げるしぃの頭を、荒巻は優しく撫でた。

/;3「私の気持ちは変わらんよ」

言い残して、村で一番上等な宿場へと歩いていく。

(*゚ー゚)「トニー様……」

65CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:31:15.55 ID:xIjdNt00O
(*゚ー゚)「………」

しぃは暫くそのまま立ち尽くしていた。ふと、そう、ふと思い出した声があった。

('A`)『なぁ、しぃ。俺の畑に人参が出来たんだ。
綺麗な花も、やっと咲き始めた。すげぇだろ?あんな荒れ地にでも花が咲くんだぜ』

('A`)『俺、アンタに見に来て欲しくて』

('A`)『アンタに…』


('A`)『見に来て欲しくて』


Σ(*゚ー゚)ハッ

67CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:40:14.99 ID:xIjdNt00O
( ^ω^)「着いたおー」
ξ゚听)ξ「ふぅ…疲れた……でも何て綺麗な村なのかしら。見てよブーンあの鳥、虹色よ」

( ^ω^)「すごいお。とりあえず宿屋を探すお」

(*゚ー゚)「もし…旅のお方ですか?」

( ^ω^)「うはwwwww美女ktkrwwwwwww内藤ホライゾンですお」

ξ゚听)ξ「…家内のツンです」

(*゚ー゚)「あら、奥様。お綺麗な方…お似合いですわ、とても」

ξ////)ξ「う、嬉しくなんかないんだからね!」

(*゚ー゚)「どちらからいらっしゃったんですか?」

( ^ω^)「ニュー速町ですお」

(*゚ー゚)「まぁ…遠路はるばる、お疲れでしょう?是非私の家にいらっしゃいませんか?」

68CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:46:30.24 ID:xIjdNt00O
ξ゚听)ξ「えっ、でも…悪いわ」

(*゚ー゚)「女一人の気楽な暮らしなんです。遠慮なさらないで。ニュー速のお話も聞きたいですし、おいしい紅茶があるんですよ」

( ^ω^)「なら…お邪魔させて貰いますお」

(*゚ー゚)「ええ、よければ村の案内も致しますわ」

ξ゚听)ξ「親切な人なのね…あ、あなた名前は」

(*゚ー゚)「あらやだ。すみません、自己紹介が遅れちゃって。私、しぃと申します」

( ^ω^)ξ゚听)ξ「しぃ?」

しぃが不思議そうに首を傾げた。

(*゚ー゚)「どうかなさいました?」

( ^ω^)「あ、預かり物があるんですお」

そう言って内藤は、先ほど預かった綺麗な花束を差し出した。

(*゚ー゚)「これは…」

69CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:53:47.46 ID:xIjdNt00O
しぃの顔色が変わる。

(*゚ー゚)「貴方がた、ドクオに会ったんですね?」

(;^ω^)ξ゚听)ξ「え……いや、はい」

(*゚ー゚)「あの子には近寄らない方がいいですわ」

( ^ω^)「と言うと…?」

(*゚ー゚)「元はここの住人でした。ただ、変わり者なんです。
村の皆がトニー様の恩恵を受けて豊かな生活を過ごしているのに…あの子と来たらそれに刃向かうように、あんな辺鄙な場所に一人で住み続けて」

ξ゚听)ξ「馬鹿じゃないの?」

( ^ω^)「ちょwwストレートすぎwwww」

(*゚ー゚)「…馬鹿なんです。罰当たりな…トニー様に喧嘩を売っているんだって、村でもつま弾きされていて」

しぃが少し寂しそうに目を伏せた。

70CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 00:59:47.60 ID:xIjdNt00O
(*゚ー゚)「昔はとても、いい子だったんですけど。
…しんみりさせちゃいましたね、行きましょう、私の家は直ぐそこですから」

ξ゚听)ξ「え、ええ」

( ^ω^)「あの…ドクオくんは、いつから村ののけ者にされ始めたんですかお?」

(*゚ー゚)「…トニー様がいらっしゃった時からですわ。私たちがどれだけ勧めても、あの子だけは断固として、トニー様のお力を借りようとしなかったんです」

( ^ω^)「・・・」

ξ゚听)ξ「もう、なんでそんなこと聞くのよ」

( ^ω^)「何となくだお。行くお」

三人は連れ立って歩いて行った。
その三人を影から見守る人物が、二人。

71CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:05:28.34 ID:xIjdNt00O
(´・ω・`)「村長…」

ショボンが情けない声と共にプギャの背中をつつく。

(´・ω・`)「ホントにやるんですかぁ?」

( ^Д^)「お前は黙っとれ!最近の若造はVIPクオリティを知らんから困るんだ」

(´・ω・`)「クオリティの底辺がよく言うよ」

(#^Д^)「プギャギャー!!!!!111」

ボグォ

( ^Д^)「…行くぞ!」

(#)・ω・`)「暴力はんたーい」

二人はこそこそと三人の後を追った。

72CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:12:21.85 ID:xIjdNt00O
(*゚ー゚)「ここが私の家です。小さいですけれど、ゆっくりしていってくださいね」

( ^ω^)「お邪魔しますだお」
ξ゚听)ξ「うわぁ…」

しぃはガーデニングが好きなのか、手入れの行き届いた庭は色とりどりの花で埋め尽くされていた。
その中に混じると、しぃの手にあるオレンジ色の花束が薄汚れて見えるほどだった。

(*゚ー゚)「今お茶と食べ物の準備をしますね」

ξ゚听)ξ「おかまいなく。私も手伝うわ」

ツンとしぃはすっかり仲良くなっていた。主婦として、女として波長が合ったのかもしれない。
込み入った話題に立ち入れず、残された内藤は大人しく座っている他になかった。

74CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:18:50.61 ID:xIjdNt00O
( ^ω^)「テラヒマス・・・」

うららかな陽気が眠気を誘う。ツンとしぃが、トニー様の話題で盛り上がっている。なんでもトニー様は金髪青い目の超絶池面らしい。内藤には関係がなかった。

( ^ω^)「だけどホントにいい村だお。こんな所でブーンしたらきっと空も飛べるはずだお」

( ^ω^)「ちょっと飛んでみるお」

「(コンコンッ)レディ・しぃ、お邪魔しても――

空も飛べるはず
⊂\     /⊃
 \\/⌒ヽ//
(( \( ^ω^)   ))
  /|   ヘ
 //( ヽノ\\
⊂/ ノ>ノ  \⊃
   レレ  スイスーイ
 



ドゴンッ!!!!

77CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:30:04.73 ID:xIjdNt00O
( ´ω`)「あいたたたたたた…」(^Д^  )

二人の男がいた。

内一人は、扉を開けた瞬間内藤が振り上げた腕がクリティカルヒットしたらしく極めて痛そうに顔面を押さえている。

Σ(#) ^Д^)「っておま!咄嗟に盾にしたろ今!!」

(´・ω・`)「すまんこ」

(*゚ー゚)「村長様、ショボンさん」

( ^ω^)ξ゚听)ξ「村長さん?」

(´・ω・`)「はい」

( ^Д^)「黙れwww…ええ、ワシがこの村の村長、プギャです。で、これがワシの秘書」

(´・ω・`)「ショボン=グッドフェローです。ショボちゃんでいいですよ」

( ^ω^)「はじめまして、ニュー速町から来た内藤ホライゾンですお」

ξ゚听)ξ「内藤ツンです」

78CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:40:25.83 ID:xIjdNt00O
(*゚ー゚)「どうなさったんですか?」

人数分の紅茶とクッキーを運びながら、しぃがかわいらしく小首を傾げる。

( ^Д^)「いや、この家に旅の方たちが入っていくのが見えたからね。トニー様に会いにきなすったのなら村の説明を、と」

(*゚ー゚)「あら、そうなんですか。村長様もショボンさんも、折角ですから召し上がって行ってくださいな」

( ^Д^)「うむ」
(´・ω・`)「かたじけない」

プギャ、ショボンはテーブル越しに夫婦に対面するように腰掛けた。しぃは気を使ったのか、フライパンを片手に厨房に引っ込む。

( ^ω^)「いただきますお」
ξ゚听)ξ「すごく・・・おいしいです」

( ^Д^)「……で。面倒臭いんで産業でお願い」

(´・ω・`)「はい。
・祈願希望者大杉
・さい銭代わりに貢ぎ物が必要
・金か物出せ」

( ^ω^)「把握した」

79CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:49:53.27 ID:xIjdNt00O
内藤はおもむろに荷物を広げた。

( ^Д^)「これは…希少なラウンジ織りの布地……ふむ、素晴らしい出来じゃないか。それもこの量だ」

( ^ω^)「子供のためだと思って奮発しましたお」

(´・ω・`)「子供?」

( ^ω^)「妻が安産出来ますようにってお祈りしに来たんですお」

ξ*゚听)ξ「あんまり言わないでよねっ」

(´・ω・`)「へぇ…」

ショボンが何度か頷く。

ξ゚听)ξ「いつぐらいにトニー様に会えるんでしょうか?」

( ^Д^)「今からでも大丈夫ですよ」

( ^ω^)「本当ですかお?!」

(´・ω・`)「ええ、先ほど瞑想からお目覚めになったようですから」

( ^ω^)「瞑想テラカッコヨスwwwwwww今すぐ行きたいおwwww
荷物はロバの馬車に置きっぱなしだったから手ぶらだし、ちょうどいいおwwww」

80CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 01:55:38.30 ID:xIjdNt00O
ξ゚听)ξ「そうね、宿屋に寄る手間も省けるわね。財布だけは置いて来てなくてよかったわ」

プギャが人好きのする笑みを浮かべた。

( ^Д^)「ならば決まりですな。では、これを食べ終えたら参りましょう。神の元へ」

(;^ω^)゚听)ξ「神の――――……」

(´・ω・`)「しぃさん、もういっぱい紅茶のおかわりいいですか?」

( ^Д^)「空気嫁」
82CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 02:06:34.54 ID:xIjdNt00O
(*゚ー゚)「またいらっしゃって下さいね」

しぃに礼を言ってから、内藤達は白の祠へと向かった。白の祠は村の中でも一層落ち着いた場所にあって、そこには一部の乱れもないような厳かなふいんき(なぜか変換できない)が漂っていた。
プギャが階段の前で足を止める。

( ^Д^)「ここが、神トニー・ブラウン様のおられる祠です」

ゴクリ。

( ^ω^)「ここが…」
ξ゚听)ξ「私…なんだか緊張してきたみたい」

ぎゅ、とツンと内藤はどちらからともなく手を繋いだ。それを少し離れた所で、ショボンが眺めていた。

(´・ω・`)「……はぁ。こんだけ働いても月給24万なんだもんなぁ」

( ^Д^)「では…最初に清めの聖水を体に掛けます」

パシャパシャ

( ^ω^)「冷たいお」

ξ゚听)ξ(ただの水みたいなんだけど…)

87CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 02:21:52.48 ID:xIjdNt00O
(´・ω・`)「次は祈りの言葉です。これで邪気を払うんです。繰り返してください」

( ^ω^)「はいですお」

( ^Д^)「びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!(AA略)」

( ^ω^)「おまwwwwww」

なんだかんだ言いながらも邪気払いを終えた二人は、深呼吸をして再び階段を見据えた。

ξ゚听)ξ「このたった一枚の扉の向こうに神様がいるだなんて…何だか不思議な感じね」

( ^ω^)「天国の扉を叩く…そんな歌が有った気がするお」

内藤がツンの手を強くにぎりしめる。

( ^ω^)「行こう、ツン」
ξ゚听)ξ「…ええ、ブーン」

90CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 02:28:44.83 ID:xIjdNt00O
一歩、一歩と。
二人は階段を昇っていく。天国の扉を叩くために。

二人は後ろなんて見なかった。だから気がつかなかったのだ。

( ^Д^)「ショボン…!」

( ^ω^)「(コンコン)失礼しますお」

(´・ω・`)「……」

ξ゚听)ξ「(コンコン)お願いに参りました」

( ^Д^)「今だ…!」

―ガチャ―

(´・ω・`)「お二人さんごめんなさい…!」

ポチッ
何かボタンを押す音が響いた。

そして――――――


ドゴオオオオオオオオオォオオオオオオオオンッッ!!!!!!!!!!!

93CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 02:37:56.88 ID:xIjdNt00O
――白の祠が、崩れて、いく。

( ^Д^)「でかしたショボン!いいか、抜かりはないな!思い切り叫ぶんだ」

(´・ω・`)「わかってますよ!」

遠隔操作型爆弾のスイッチを爆風の影響で汚れたスーツにしまいながら、やけくそのようにショボンが怒鳴り返す。

そう、仕掛けは始まっていた。

( ^Д^)「たいへんだ━━━━━━━━━━━!!!!!!」

(´・ω・`)「誰か!!誰か来てくれ!!」

( ^Д^)「トニー様が消えてしまった!!!!」

(´・ω・`)「我らが神、トニー・ブラウン様が消えてしまったアァアアアア!!!!!!1111」

94CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 02:45:22.47 ID:xIjdNt00O
(;^ω^)「う……痛い……お」

跳ね飛ばされた内藤は地べたに転がったまま、崩れていく景色を見ていた。
何が起きたか分からなかった。ただ扉を開けた瞬間、内藤は見た。

神様なんか居なかった事を。

(;^ω^)「つ、ツン…!ツン!!う、うう…」

突然起こった爆風の衝撃に骨全体が軋んだ。だが、そんな事は構っていられない。ツン、ツンは…!

ξ--)ξ「……………」

内藤から2メートルほど離れた場所に、ツンは転がっていた。あちこちに擦り傷が出来て、そこから血が流れている。

(;^ω^)「つ、ツン…大丈夫かお」

地面を這うようにして、内藤は細い身体を抱き起こした。村長と秘書が何かを叫んでいるがそんな事は今はどうでもいい。

( ;ω;)「ツン、目を開けてくれお…」

96CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 02:56:55.73 ID:xIjdNt00O
怒号。むせるような煙の匂い。瓦礫が倒壊する際の土埃。
楽しげに遊んでいた小鳥たちはいつの間にか姿を消して、ただ空だけが皮肉に青かった。

ξ゚听)ξ「う、っく…ブーン……?」

( ;ω;)「ツン!ツン!…良かったお」

内藤は思い切りツンの身体を抱きしめた。

バタバタバタバタッ!

(´ー`)「何の騒ぎだい!!」

(´・ω・`)「トニー様がお怒りになられたんだ!!!悪魔の侵入を!!!!」
ガヤガヤ!

(*゚ー゚)「な、何事ですか………し、白の祠が!あぁ……」

( ^Д^)「よそ者を捕まえろー!トニー様を消した悪魔を捕まえるんだ!!」

ザワザワザワッ

/;3「何ごとだね君達……なんだこれは」

捕まえろ!
捕まえろ!
捕まえろ!

気付いた時には、内藤達の周りを殺気走った数人の村の衆達が囲んでいた。

99CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:05:20.99 ID:xIjdNt00O
(;^ω^)(殺され…るのかお)

ξ゚听)ξ「ぶ、ブーン…どうなってるの…?」

いつも強気なツンが、怯えたように内藤の服を握ってくる。その目尻にはうっすらと涙がたまっていた。

( ^ω^)(僕だってそんなの、わかんないお)

内藤は強く、ただ強くツンを抱きしめ返す。
じりじりと、人の輪は狭まりつつあった。

( ^ω^)(ただわかるのは、ツンを逃がさなきゃと言う事だけだお!)

ξ;凵G)ξ「ブーン…」

( ^ω^)「ツン…いいかお。合図したら出口に向けて走るんだお」

ξ゚听)ξ「そんな…アンタはどうすんのよ!」

( ^ω^)「僕もすぐに追い掛けるお。足の速さだけは取り柄だって、いつも言ってくれるのはツンだお?」

ξ;凵G)ξ「うっ…ひっく…」

101CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:11:01.00 ID:xIjdNt00O
捕まえろ!
捕まえろ!
捕まえろ!

ξ;凵G)ξ「ブーンのくせにそんな死亡フラグみたいな事言ってんじゃないわよ…」

悪魔には死を!悪魔には死を!

( ^ω^)「…大丈夫だお。さぁ、…」

殺せ!殺せ!殺せ!


狂ったようにヒートアップしていく掛け声の中、ブーンはただ冷静になろうと努めた。
大丈夫。人数はたいしたことがない。突破口さえ作れれば、ツンは…!

( ^ω^)「今だお!」

103CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:14:10.48 ID:xIjdNt00O
( ^ω^)「三・倍・速………!!!!」


 ブーン  /⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
    |  /
     ( ヽノ
    ノ>ノ
  三 レレ

104CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:21:24.83 ID:xIjdNt00O
(;´ー`)「うわあああああッ」

ツンを突破口へ向かって突き飛ばすと同時に、内藤は物凄いスピードで自分達を囲む人垣の中へと突っ込んでいった。
威力と言うよりも、内藤のその気迫に怯んだのかも知れない。
途端に蜘蛛の子を散らすように人垣が霧散する。

⊂二二二二(#^ω^)二二⊃「おまいら内藤ホライゾンを舐めるなだお!!!!!!」

風のような、いや、嵐のようなスピードで内藤は駆け回り、人垣を崩しまくる。そう、逃げるツンに注意が行かないように。

⊂二二二二(#^ω^)二二⊃「うおおおおおおおおおッ」

(;^Д^)「つ、捕まえろ!数では余裕で勝ってるんだ!!生け捕りにしろ!!!」

プギャが叫ぶ。

106CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:30:21.88 ID:xIjdNt00O
( ゚Α゚)「てめぇ舐めんな!トニー様をどこにやったんだ!」

ドカッ
ボコッ!

⊂二二二二(#^ω^)二二⊃「う、ううっ」

一人の若者のパンチを皮切りに、次々と男達のパンチが内藤に叩き込まれていく。
内藤は喧嘩なんかしたことがなかったが、本能のままに殴り返していた。だがやはり多勢に無勢で殴られる数の方が断然多い。顔が赤く腫れる。唇が切れて錆の味が満ちる。
それでも、走り続けた。

⊂二二二二(#)´ω^)二二⊃「こんな所で…死んだらツンが…」

(;´・ω・`)「村長!あいつまだ走り続けて…!」

( ;^Д^)「…」

呆然としたようにプギャが口を開けているのと同じように、いつしか周りも攻撃の手を緩めていた。

109CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:41:45.32 ID:xIjdNt00O
⊂二二二(#)´ω`)二二⊃「ブウゥウーーーン!!!ブーーーーーーン!!!!」

内藤の勢いは止まらない。誰もが息を飲んでいたその時、静かに冴えた声が響いた。

「私が…やります」

(;´・ω・`)「え、ちょ…待っ…ッ!」

ショボンが止める間も無く、その人物は内藤の前に立ちはだかる。

⊂二二二(#)´ω`)二二⊃「お…」

(*゚ー゚)「内藤さん…」

しぃは、とろけるような優しい笑みを浮かべた。
敵意のなさそうなその表情に、一瞬内藤の足が鈍る。

それが命取りだった。

(*゚ー゚)「…死んでつぐなってちょうだい」


ゴガアアアァアアアアアアァアアアアアアアアン!!!!!!

( ^Д^)・ω・`)「ちょwwwwwwwww」

( ´ω`)「う…」
(ツン………ごめんお)

しぃの持った中華鍋が内藤の頭に炸裂したのと同時に、内藤は意識を失った。

113CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:49:23.55 ID:xIjdNt00O
ξ;凵G)ξ「はぁ…はぁ…ブーン……」

ツンは走った。絡む追っ手を振り切り、痛む身体に鞭打って必死に走った。
後ろは怖くて振り返れなかった。ブーンは絶対来る。来るんだ。
言い聞かせてひたすらに走った。
もうすぐ出口だ。ドクオの顔が思い浮かぶ。そうだ、彼に。事情を説明して…!

/;3「お嬢さん」


ξ゚听)ξ「…ッ!」

出口まで後数メートル、と言う時になって前方に人影が現れた。柔らかな物腰の老紳士。
この村の人間ではないのかもしれない。老紳士は出入口を塞ぐようにして立っている。

ξ゚听)ξ「そこを…そこをどいてちょうだい!」

/;3「んー…いけないねぇ」

114CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 03:58:25.58 ID:xIjdNt00O
/;3「ああ、私の名前は荒巻スカルチノフ。以後お見知りおきを、レディ」

ξ゚听)ξ「荒巻だろうかアザラシだろうが何だっていいわよ!どかないならこっちから行ってやるんだから!」

見た感じ女のツンでも突破出来そうな、どちらかと言えば弱々しい老体。
手段を選んでいる暇はなかった。

ξ゚听)ξ「どきなさい…ッ!」

身体を小さく丸めて弾丸のように出入口へと飛び込んでいく。老紳士こと荒巻は、柔らかく笑んだ。

ガチャッ。

ξ゚听)ξ「……!!!」

(´<_`)「なかなか威勢のいい女子じゃないか。なぁ、兄者」

(´_ゝ`)「これで黒髪ストレートロングだったら完璧好みなんだけどな、弟者」

/;3「アザラシではない、荒巻、だよ。レディ」

115CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 04:10:49.91 ID:xIjdNt00O
/;3「あまり私を怒らせない方がいい……」

――ドキュンッ!
荒巻の手の中の物体が少し跳ねると同時に、脇にあった木製の看板が砕けた。

とんでもない速さと身のこなしで現れた二人の男に身を拘束されたまま、ツンは恐怖に目を見開く。

/;3「ほっほっほ…ピストルがそんなに珍しいかね」

荒巻は尚も柔らかな笑みを浮かべたまま、銃口でツンの頭をつつく。

116CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 04:12:03.05 ID:xIjdNt00O
ξ;凵G)ξ「はなし…なさいよぉ……ブーンと…ブーンと約束したんだから…!」

どんなに悶えても、暴れても、二人の男による拘束はビクともしない。

/;3「残念ながら、逃がすわけにはいかないのさ」

荒巻から表情が、消えた。

/;3「なぜなら私も君達悪魔を恨んでいるからだ」

ドグッ

荒巻の冷酷な声と共に、二人の男のうち小さい方の放った拳がツンの腹に沈んだ。

ξ゚听)ξ「うっ…!」
(ブーン…ごめんね)

/;3「……連れて行け。」
(´_ゝ`)´_>`)「はい」

意識のないツンを抱えて、三人は再び白の祠へと向かった。

117CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 04:19:47.83 ID:xIjdNt00O
( ^Д^)「縛れ。十分に縛り終えたらとりあえず広場に運べ」

(111´`)「はい」

( ´ω`)「………」

ぐるぐる巻きに縛られた内藤を、村の若い衆が二人がかりで運んでいくのを見送ってプギャはため息をついた。

( ^Д^)「女の方には逃げられたか…」

(´・ω・`)「レディ・しぃ。落ち着いて」

(*;ー;)「トニー様が…トニー様が…」

ショボンが泣きじゃくるしぃの華奢な背中を落ち着かせるように撫でようとした――のをパシリと誰かの手が払いのけた。

/;3「人の女に許可無く触らないで貰いたいね」

(´・ω・`)「(…ぶち殺すぞ)」

118CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 04:28:11.22 ID:xIjdNt00O
/;3「女は捕まえたよ…」

しぃの肩を抱きながら荒巻が顎をしゃくる。SPの腕に、ぐったりとしたツンがぶら下がっていた。

ξ´凵M)ξ「……」

( ^Д^)「おお…有り難い!さすが荒巻スカルチノフ様だ!!」

/;3「そんな事よりどうするんだね、この落とし前は。トニー様がいないならば仕方ない。永住権の話は無かった事にして―――」

(;^Д^)「お待ちください荒巻様!私どもに名案があるのです!」

/;3「名案だと?」

荒巻の眉が跳ね上がる。

( ^Д^)「はい。まずは広場に皆を集めて、それからお話致しましょう。ショボンくん、『集まれ花火』を打ち上げて各戸に拾集をかけてくれ」

(´・ω・`)「わかりました」

121CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 04:37:55.99 ID:xIjdNt00O
花火のある時計台を目指してショボンが緩やかに高くなった丘を小走りに上っていくと同時に、プギャたちは移動を始めた。

( ^Д^)「…」

プギャが一瞬だけ、ショボンを振り返る。

(´・ω・`)「…」

『共犯』

その目がそう告げていた。

黙々とショボンは丘を上る。スーツに染み付いた火薬の匂いが不快だった。

(´・ω・`)「やれやれ、今日はよく火薬を扱う日だな」

時計台の倉庫から花火を取り出す。時化っていないかどうかを確認して、ボタンを押し、声を吹き込む。

(´・ω・`)『えー、ショボンです。聖域を荒らした罪人の処分について緊急会議を行います。今すぐ広場に集合してください。
それとマターリさん、二ヶ月前に貸した「恋する妹はせつなくてお兄ちゃんを思うとすぐHしちゃうの」返してください』

123CATS ◆STRAY/tOkM :2006/03/26(日) 04:48:17.08 ID:xIjdNt00O
(´・ω・`)「よいしょ…」

ヒュルルルルル…

吹き込んだ花火に火を付けて、打ち上げる。
まだ闇は訪れていない空に、薄い光が舞い散って、ショボンの声が村中に行き渡った。

Σ(;´ー`)「ちょwwwwんなとこで言うなwwwwwww」

(´・ω・`)「そういえばこの『集まれ花火』もトニー様が作った物だったか…」

ガラン。

残骸を片付けて、ショボンは丘を下りていく。
夕焼けの色がこの村をゆっくりと染めていく気配を全身で感じながら、ショボンは目を閉じた。

(´-ω-`)「トニー様、アンタは今頃どこで何やってんでしょうかねぇ。こんなに皆に慕われてんのに」

目を開ける。

(´・ω・`)「…ま、いいか」

丘を下りてそのまま右手に真っすぐ行くと、広場だ。
夕焼けの赤と一緒に、少しずつ。
この村で狂乱が始まろうとしていた。

【第3部完】


第4部
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