28
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:09:06.38 ID:lJwpJ6NmO
【第2部――拝啓、トニー=ブラウン】
―IN ハレルジャ=ヴィップレッジ
(;^Д^)「…………………………………」
童話の世界から抜け出たような平和な村。
ハレルジャ=ヴィップレッジ内の聖域、トニー=ブラウンが篭る白い神殿を模した家屋の階段に腰掛けて、中年男がうなだれていた。
(´・ω・`)「プギャ村長!村長!」
足早に駆け寄って来た黒いスーツの青年が、手にしたファイルを読み上げる。
(´・ω・`)「今日の報告です。川の水の水質低下、森で暴れ熊が出没、ジェームズさんが若い女に騙される、畑の作物が一部萎れる、村長に貰ったジョジョの5巻に陰毛が…」
(;^Д^)「あいたたたたたたたたたたたたた」
(´・ω・`)「大丈夫ですか?」
30
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:16:41.75 ID:lJwpJ6NmO
( ^Д^)「大丈夫じゃないわい…それよりショボン、頼んでおいた茶は?」
(´・ω・`)「忘れてました」
(#^Д^)「今すぐ持ってこい!!!!」
(´・ω・`)「そんな怒らないでくださいよ。だから禿げるんだよジジィ」
( ^Д^)「余り私を怒らせない方が(ry」
(´・ω・`)「わかりました」
タッタッタッタッ…
( ^Д^)「ふう…」
タッタッタッタッ…
(´・ω・`)「村長」
( ^Д^)「何だ」
(´・ω・`)「玄米茶でよろしいですか?」
( ^Д^)「何でもいいから早……うっ!」
31
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:22:59.57 ID:lJwpJ6NmO
(´・ω・`)「村長!村長!」
( ^Д^)「ショボ…ン…」
――倒れたプギャは再び目を開ける事はなかった。
私は泣いた。
村長は小さな頃から僕に目をかけてくれていた。
成人してからは秘書として雇ってくれた。
ケチだ禿げだエロ親父だと罵られても、私にとっては本当にいい人だったんだ。
私は泣いた。
村長が帰って来るはずもない。それでも、何かを信じていたのかもしれない。
ひたすらに、泣き続けた。
春の匂いがする昼下がりだった。
【完】
32
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:30:16.33 ID:lJwpJ6NmO
(;^Д^)「ちょwwwなに勝手に死なせてんだコラ」
(´・ω・`)「…チッ」
(;^Д^)「うぐぐ…は、胃が痛…い…」
(´・ω・`)「アナルにフリスクでも入れたんじゃないんですか」
(;^Д^)「胃だつってんだろうが!もういいショボン、とにかく茶と胃薬を持って来てくれ…」
(´・ω・`)「わかりました」
タッタッタッタッ
(;^Д^)「…ハァ…ハァ」
タッタッタッタッ
(´・ω・`)「村長、大正漢方胃腸薬と正露丸どっちが…(;^Д^)「どっちでもいいから持って来て――――――――――――――!!」
34
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:37:54.08 ID:lJwpJ6NmO
【プギャ村長宅】
(´・ω・`)「お茶と、胃薬と……ホント人使い荒いよなぁ…やんなっちゃう」
愚痴愚痴と呟きながら品物の乗った盆を持って歩いていると、井戸の脇に差し掛かった時、ショボンの目に一人の女性が映った。
(´・ω・`)「しぃさん、お洗濯ですか?」
(*゚ー゚)「あら、ショボンさん。そうよ、お洗濯。お仕事いつもご苦労さま」
(*´・ω・`)「いや〜、それほどでもあります。」
照れるショボンにしぃが優しく微笑む。
夫に先立たれ若くして未亡人となったしぃは、村中の男達が憧れる美女なのだ。
35
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:46:03.46 ID:lJwpJ6NmO
(*゚ー゚)「今日も平和ね。こんな日が続くのもトニー様のおかげね」
(;´・ω・`)「…」
(*゚ー゚)「?どうかなさって?」
一瞬表情の変わったショボンを見て、しぃが不思議そうに首を傾げる。
ショボンは取り繕うように咳ばらいをして、いつもの笑顔を浮かべた。
(´・ω・`)「いえ、何でも」
(*゚ー゚)「過去、荒れ地のようだった村がこんなに美しい自然に溢れて…トニー様は素晴らしいお方だわ」
(´・ω・`)「全くもって同感です」
(*゚ー゚)「そうだわ、ショボンさん。トニー様に一つお願い事を言付けていただけるかしら。」
(´・ω・`)「なんでしょう?」
(*゚ー゚)「井戸のお水を増やして欲しいんです。今朝見たら、少し足りないような気がして…」
36
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 21:53:29.46 ID:lJwpJ6NmO
(´・ω・`)「井戸ですね。わかりました、お伝えしておきます」
(*゚ー゚)「お願いします」
しぃは上品に頭を下げた。
(*゚ー゚)「時にショボンさん、トニー様はお元気でしょうか?近頃お見かけしませんけれども」
(´・ω・`)「ええ、今は『神の力』を養うために『祠』でお休みになっておられますが、大変お元気ですよ」
(*゚ー゚)「『神の力』…やっぱりトニー様は偉大なんだわ」
38
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:01:31.04 ID:lJwpJ6NmO
(´・ω・`)「では、私はこれにて失礼致します。
トニー様が白の祠(ほこら)に篭られている際は、決してお立ち入りにならないでくださいね。神の怒りを買う恐れがありますから」
(*゚ー゚)「わかりました、肝に銘じておきます。ごきげんよう、ショボンさん」
立ち去るショボンの背中が見えなくなってから、しぃは空を見上げた。
いつものように青い。しかし何となくいつもと違うような気がした。
(*゚ー゚)「…さて、これくらいでいいかしらね」
盥と洗濯物を抱えて立ち上がり、我が家へと足を向ける。
('A`)「……」
そんなしぃの背中を物影から見送る者がいることには、気付かなかった。
39
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:09:51.86 ID:lJwpJ6NmO
一方、白の祠。
( ^Д^)「ショボン…ショボンはまだか……」
胃痛に苦しみながらも、プギャはゆっくりと祠に通じる階段を上っていく。
一歩。二歩。
扉の前に着いた。
( ^Д^)「……」
そっと扉に手をかけて―――
/;3「やあ」
Σ(;^Д^)「プギャ――――!!!!アアアアア!!!11」
バタン!
開きかけた扉を急いで閉めて背後からの声に向き直る。
( ^Д^)「こ、これはこれは…荒巻様。何のご用でしょうか?」
/;3「ふふ…トニー様の様子はいかがかと思ってね」
荒巻は老齢紳士にふさわしい優雅さで笑んだ。
40
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:17:27.07 ID:lJwpJ6NmO
(´・ω・`)「村ー長――――お茶持ってきます……あれ、荒巻さん。ご機嫌いかがですか」
/;3「おお…ショボン=グッドフェローくんか。機嫌?素晴らしく快調だよ。見たまえ、この足を」
荒巻が持っていたステッキを地面から離し、片足だけでバランスを取りながら得意げに左足を揺らして見せる。
(´・ω・`)「すっかり完治したようですね」
( ^Д^)「いやいやいや大変喜ばしい事です!はい!」
/;3「ここを訪れる前は半信半疑だったがね。
スカルチノフ鉄道会社社長の財力を以てしても治療は不可能と思われた、この足が再び動くようになるとは…トニー様には本当に感謝しているよ、村長」
42
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:24:54.94 ID:lJwpJ6NmO
( ^Д^)「ハイ!そりゃもう身に余る光栄でございます。
このような村に荒巻様のようにVIPなお方がいらしったと言うだけでも光栄ですのに、温かなお言葉までかけていただいて…/;3「ところで村長」
Σ( ^Д^)「は、はい!」
/;3「私はこの村が気に入った。そこで、だ。永住許可権を出して貰いたいのだが」
( ^Д^)(´・ω・`)「え、永住許可権!!!」
( ^Д^)「あ、貴方様が…この村の住人に…ですか?」
44
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:33:29.22 ID:lJwpJ6NmO
/;3「私もそろそろ引退の年頃だ。財も十分に蓄えた。詩人も筆舌に尽くせないであろうこの緑溢れる美しい村で、美しい妻を傍らに置いてゆっくりと余生を過ごしたいのだ」
(´・ω・`)「妻?」
/;3「ふふ…しぃ、と言ったかね。あれは美しい女だ。都会にいる女にはない美しさがある」
( ^Д^)「し、しぃ君か…」
(´・ω・`)「しかし、しぃさんは別れた旦那さんを今も思い続けて、言い寄る男性は皆丁重にお断りしているようですが」
/;3「フッ…」
荒巻が不敵に笑う。
/;3「女は金さ。そうだな…しぃが私になびかなかったその時は、トニー様にでもまたお願いすることにしようか」
45
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:39:32.31 ID:lJwpJ6NmO
クハハハハハハ
荒巻が高らかに笑う。
/;3「それでは村長、秘書殿。永住権についてはご一考お願いするよ」
(;^Д^)「は、はあ…」
(´・ω・`)「そ、村長!(小声)」
/;3「もちろんタダでとは言わない。私がこの村の住人になった暁には、相応の繁栄を約束しよう」
( ^Д^)「わかりました!荒巻スカルチノフさん!貴方に本日、ハレルジャ・ヴィップレッジに於ける永住権を発行いたします!」
(;´・ω・`)「そ、村長―――――!!!」
46
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:43:40.07 ID:lJwpJ6NmO
ショボンがプギャの腕を掴んだ時には遅かった。
無言でプギャを見つめる目に、殺気が篭る。
(;^Д^)「……」
/;3「ふはははは。物分かりがいい者は嫌いじゃない。それでは私は散歩の続きでも…アディオス」
荒巻は上等のステッキを軽く振りながら、意気揚々と、それでいてこよなく優雅に村の通りへと歩いて行った。
47
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:52:47.17 ID:lJwpJ6NmO
(´・ω・`)「………」
( ^Д^)「………」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
(; ^Д^)「だ…が、あの状況だとああ応えるしかないだろうが。相手はスカルチノフ鉄道会社だぞ!」
(´・ω・`)「……もういいです。それより村長、お茶が入りましたよ。冷えたけど」
( ^Д^)「くれ。…ふう」
掃き清められた真っ白な階段に並んで座って、空を眺める。
いらつくほどにいい天気だ。プギャは頭を抱えた。どうしようもなかった。
(´・ω・`)「ホント…どうしたらいいんでしょうねぇ」
( ^Д^)「ああ、まさかトニー様が…」
(´・ω・`)「KA‐TSU‐UNの追っ掛けで東京行ってるなんて」
( ^Д^)「ちょwwwwwwwwww」
49
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 22:58:54.73 ID:lJwpJ6NmO
(´・ω・`)「まあそれは冗談ですけど」
( ^Д^)「お前この状況でよく冗談飛ばせるな」
(´・ω・`)「どうすりゃいいんでしょうね…」
( ^Д^)「ああ、まさかハレルジャ・ヴィップレッジの象徴であるトニー様が」
( ^Д^)(´・ω・`)「失踪なされたなんて―――――…」
( ^Д^)「村の連中に漏れてみろ、たちまちパニックになってしまう。
…『神の力』補給期間、と言う事で村の連中はどうにかごまかしているが…それもいつまで持つかどうか」
(´・ω・`)「これがホントの神隠し…か。まさか尋ね人の貼紙を貼る訳には行きませんしね」
50
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 23:09:23.41 ID:lJwpJ6NmO
( ^Д^)「問題なのは、アレだ。トニー様がいらっしゃらなくなってからと言うもの、制御されていた環境バランスが狂ったのか少しずつ…そう、少しずつ昔のハレルジャに戻りつつあると言う事だ。
あの乾いた灰色の村にな」
(´・ω・`)「ああ、レディ・しぃも言ってました。井戸の水が少なくなっている、と。やはりこれも衰退の前兆ですか」
( ^Д^)「そういうことになるだろうな。…ッあいたたたたた、ショボン、胃薬くれ」
(´・ω・`)「いい年して甘えないでください」
( ^Д^)「おまwwヒドスwwww」
(´・ω・`)「で、どうすんですか。バレたら叩かれるのはこちらですよ。
トニー様に一番近い位置にいたのは、村長なんですから。…私は巻き添え喰らって死にたくなんかないですからね」
(;^Д^)「うむむ…」
51
:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/03/25(土) 23:16:36.48 ID:lJwpJ6NmO
( ^Д^)「バレたら…バレたら…………バレたら?」
(´・ω・`)「村長?」
プギャは腕を組み、唸るように考え込む姿勢に入った。ショボンは不思議そうに見守りながら、プギャの頭のバーコードを数えていく。
27まで数え終えた時、不意にプギャが顔を上げた。
( ^Д^)「おい、ショボン。トニー様の失踪を知るのは今のところワシとお前だけ。つまりワシとお前は共犯者。…わかるな?」
(;´・ω・`)「えっ……は、はぁ。まぁ、」
( ^Д^)「なら耳を貸せ。考えがある」
ぼそぼそぼそぼそ
ひそひそひそひそ
不承不承耳を貸した、ショボンの目が見開かれる。
村を見下ろす空は少し曇りを見せたようだった。
【第二部完】
第3部
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