1 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 18:43:46.70 ID:GvI/93yC0
僕は劇団『アナリスク』に所属する劇団員。

役者と言えば聞こえはいいけど、
そこそこ名が通ってはいるが、『アナリスク』の経営状態は悪く
僕も、芝居の稽古をする時間よりも、アルバイトをしている時間の方が長い有様だった。

このまま『アナリスク』にいて、役者として成功できるのかどうか、僕は悩んでいた。

――そんな時だ。
有名劇団『ニュー速VIP』の演出家、荒巻スカルチノフの次回作の出演者を
団員非団員に拘らず、オーディションで選ぶというニュースが飛び込んできた。

もし選ばれれば、僕にはそれだけの実力があるということだし、
荒巻スカルチノフの作品に出演できれば、きっと役者として成功できる。

もし選ばれなければ、僕の実力はその程度なんだろう。
その時は、もう役者の道は諦めよう…僕はそう覚悟して、オーディションに応募した。


( ^ω^)がある閉ざされた雪の山荘へ行くようです
原作 「ある閉ざされた雪の山荘で」著・東野圭吾
3 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 18:50:29.34 ID:GvI/93yC0
書類選考、1次審査、2次審査と僕はどうにか進むことが出来た。
そして最終選考。
最終選考まで残ったのは、僕以外は全員『ニュー速VIP』の劇団員だった。

最終選考は、審査員と他の受験者の前で、実際に演じて見せるというものだった。
シェークスピア作品の名場面をアレンジした脚本がいくつか用意されていて、
その中から、受験者が好きなものを選んで演じる。
僕は、以前演じたことがあった『オセロ』を演じることにした。

手ごたえはあった。ミスもなく、満足のいく演技が出来た。
審査員の中には、僕を見て頷く人だっていた。
けど、最終選考はやっぱりレベルが違う。
他の人の演技を見ていると、僕はどんどん不安になっていった。

(;^ω^)「やっぱり『ニュー速VIP』はすごいお……お?」

1人の女性が、審査員と僕を含めた受験者の前に立った。

6 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 18:54:02.28 ID:GvI/93yC0
ξ゚听)ξ「ツンです。よろしくお願いします」

(*^ω^)「お!お!かわいいお!!」

…彼女の演技は、正直、最終選考まで残れるほどの実力があるとは思えなかった。
けど、彼女は本当にかわいくて、
演技力の事を差し引いても、舞台に出す価値のある女性だと思った。
彼女が最終選考まで残ったのも、それが理由なんだろう。

/ ,' 3「……では、合格者を発表しよう。合格者は全部で7名だ」

(;^ω^)「……」

/ ,' 3「クー、ちんぽっぽ、ツン、ジョルジュ、ショボーン、ドクオ、それと『アナリスク』の内藤」

( ^ω^)「ktkr!!!!!!!!!!1111」

僕は、見事合格することが出来た。

9 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 18:55:40.29 ID:GvI/93yC0
/ ,' 3「今後のことは追って連絡をする。以上」

僕は、待った。

荒巻先生からの連絡を、wktkして待った。

( ^ω^)「……」

(;^ω^)「……遅いお」

…気が付けば、合格を告げられてから1ヶ月が経とうとしていた。

(;^ω^)「……僕、本当に合格したのかお……?」

あれは夢幻だったのだろうか――そんな風にすら思ってしまう。

そして、合格を告げられてから1ヶ月と3日目。
1通の手紙が配達された。差出人は、荒巻スカルチノフだった。

13 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 18:58:03.97 ID:GvI/93yC0
封筒の中身は、ワープロで書かれた無愛想の手紙と、
とあるペンションの住所と電話番号、そしてそこへの地図をプリントアウトした紙だった。

【荒巻の手紙】

/ ,' 3『次回作品の出演者諸君。

    芝居完成の為、諸君と私だけで、内密に打ち合わせを行いたい。

    家族、友人、恋人、他の劇団員や事務員等、部外者への口外を禁止する。
    内容に関する一切の質問は受け付けない。
    理由の如何に拘らず、一名でも遅刻や欠席があった場合は、
    全員のオーディション合格を取り消す。

    20日の午後2時までにペンション『ニート』に集合。
    また、24日の朝までペンションから一切出ることは出来ない。
    場所は、同封の地図を参照すること。以上 荒巻スカルチノフ』

(;^ω^)「……なんだお、これ」

15 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 19:01:09.60 ID:GvI/93yC0
(;^ω^)「荒巻先生は変わり者だって有名だお……でも、内密に打ち合わせってなんだお?」

僕があまり穏やかでないその手紙に唸っていると、携帯電話が着信を告げた。

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ。内藤君?」

( ^ω^)「あ、ちんぽっぽかお」

電話の相手は、同じ合格者のちんぽっぽだった。
合格者が発表された後、今後連絡の必要性が出てくるということで、
7人全員が互いの電話番号を交換したんだ。
……と言っても、合格発表の後、誰からも電話はかかってこなくて、
それが僕の合格は間違いだったのでは、という疑いに拍車をかけていたんだけど……。

(*‘ω‘ *)「荒巻先生から手紙キター?」

( ^ω^)「今読んだところだお」

(*‘ω‘ *)「なら話は早いね」

(*‘ω‘ *)「今ね、7人全員で一緒に行こうって、みんなで話してるんだけど、内藤君も一緒に行けるよね?」

16 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 19:02:01.97 ID:GvI/93yC0
ちんぽっぽによると、
20日の朝に待ち合わせて、ジョルジュの知り合いのワゴン車で、全員でペンション『ニート』まで行く
という事が6人の間で話し合われて、もうほぼ決定らしい。

(*‘ω‘ *)「交通費も安くすむしねー」

と、ちんぽっぽは言ったけど、
本当の理由は、”1人も遅刻や欠席をしない為”だ。
僕にとってもそれはありがたい話だから、もちろんすぐに把握した。

待ち合わせ時間と場所を聞いて、僕は電話を切った。

( ^ω^)「……なんだか楽しみになってきたお!」

全員で、ということは、彼女――ツンも一緒なんだ。

( ^ω^)「ぽこたんおっきおっきしてきたお」

合格者は、全部で7人。その内、男が4人だ。

年の割りに落ち着いているショボーン(´・ω・`)
豪傑そうな印象の、おっぱい大好きジョルジュ( ゚∀゚)
舞台の外では影が薄いドクオ('A`)
そして僕だ。

女の子は、舞台に上がる女優だからやっぱりみんなきれいだった。
凛とした演技を見せたクー川 ゚ -゚)
明るくて気さくなちんぽっぽ(*‘ω‘ *)
そして、ツンξ゚听)ξ

(*^ω^)「ツンに会えるんだお……」
22 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 19:06:43.56 ID:GvI/93yC0
僕は彼女に惹かれていた。
半分一目惚れだけど、彼女の外見だけが好きなわけじゃない。

彼女が演じたのは、『ロミオとジュリエット』。
彼女は自分の演技力のレベルを知っているのか、
見ているこっちが切なくなるくらいに必死に演じていた。
そんな姿に、僕は心奪われたんだ。

だから僕は、全員の最終選考テストが終わって合格発表を待っている間、
彼女に声を掛けることにした。

(;^ω^)「あ、あああ、あの!」

ξ゚听)ξ「……えっと、内藤さん?」

( ^ω^)「え、何で僕の名前知ってるんだお?」

23 ◆bsKbvbM/2c :2006/03/19(日) 19:07:46.68 ID:GvI/93yC0
僕は『ニュー速VIP』の劇団員ではないのに、どうして?

ξ゚听)ξ「あなたの『オセロ』、すごくすてきだったから……名前、覚えてたの」

(*^ω^)「……うれしいお。ありがとうだお!」

ξ////)ξ「べべ、別にあなたが特別うまいってわけじゃないのよ!?勘違いしないでよね!」

( ^ω^)「お?」

……彼女は、叫ぶようにそう言って走り去ってしまった。

(;^ω^)「なんか変な子だお……でも」

僕は、そんな彼女に強く惹かれたんだ。
だから、ツンと3日間も一緒にいられる……そう思うと、打ち合わせとやらが楽しみで仕方なかった。

( ^ω^)「はやく20日にならないかお」


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第2話目